さあ、
どうやって伝えようか
いままでにない発想によって生み出された、画期的な新製品。
何もしなくても売れるのでは?なんて思うけれど。
そう簡単にはいかないのが営業・企画の面白さだったりする。
シード1dayPure EDOF(イードフ)
コンタクトレンズ使用者の高齢化が進む現代で、多様化するニーズに応えるべく誕生した、新しい遠近両用コンタクトレンズ。いままでにない全く新しいレンズデザインにより、遠方・近方だけでなく様々な距離での自然な見え方を実現するとともに、周囲の明るさやレンズの動きなどの外的影響を受けにくく、安定した見え方を可能にした。ターゲットは初期老視世代〜老視の進んだ世代までと幅広い。
キャッチコピーは「日本初、医療発。明日を変える遠近」。
拡張焦点深度ってなに!?
EDOFとは、拡張焦点深度という意味です。焦点深度を拡張する。つまり、ピントが合っている範囲を広げる、ということですね。この拡張焦点深度という原理を取り入れた新しいレンズデザインが、シード1dayPure EDOF(以下、EDOF)の強みであり、処方施設様やお客様にアピールするべきポイントなのですが…
そのポイントを理解するまでが本当に大変だった…!今、彼が拡張焦点深度について説明してくれましたが、最初から「このように説明してください」って与えられるわけじゃない。最初は専門用語だらけの説明を何度も聞いて、理解して。そこから処方施設様やお客様が聞いて理解できるような言葉に自分たちで置き換えていく作業が必要です。
この作業はどの製品においてもやっていることですが、今回のEDOFは新しいデザインで、新しい価値のあるコンタクトレンズです。コンタクトレンズに毎日関わっている僕たちでさえ、一度聞いただけじゃ理解できない原理や仕組みを、いかにわかりやすく魅力的に伝えるかが今回のプロモーションの鍵でした。
私はその理解をクリエイティブに。彼は営業に。それぞれどうアウトプットしていくかに力を入れましたね。理解が不十分なまま誤った認識でツール制作を進行してしまって、慌てて軌道修正したこともありました…
あえて使った
「医療」という言葉
EDOFは革新的な新製品だが、遠近両用コンタクトレンズとしては後発製品であった。
1dayの遠近両用コンタクトレンズは、シードでも他社メーカーからもすでに販売されています。でも、実際はその存在を知らないお客様が多い。日本では、年間10万人が老視を機にコンタクトレンズから眼鏡に切り替えていて、特に老視が始まる40代頃からコンタクトレンズの支出が急激に下がるというデータもあります。
コンタクトレンズからの離脱を食い止めて、いかに継続使用してもらえるかが課題でした。EDOFで目指したのは「老視になったらコンタクトレンズを卒業して、眼鏡に変える」という流れを「コンタクトレンズで生涯快適に過ごす」に変えること。そこで、あえてキャッチコピーで「医療※」という言葉を使いました。今までと何かが違う、ということを一目見ただけで伝わるようにしたかったんです。
- ①そもそもコンタクトレンズは高度管理「医療」機器であるという点(医療機器メーカーが発売している製品)
- ②医療分野(眼内レンズ)で既に使われている原理(EDOF)をコンタクトレンズで採用したという点
コンタクトレンズが医療機器だということは、僕たちコンタクトレンズ業界の者からしたら当たり前のことです。だから他のメーカーは謳っていなかった。でも、このコピーを見たときに医療機器であることはコンタクトレンズの価値だったのかと改めて気がつきました。実際、コピーを見た処方施設様やお客様の反応もよかったと思います。
そう言ってもらえると嬉しいです…!遠近両用コンタクトレンズが普及しない原因のひとつとして、使用に対する心理的な壁があると思うんです。どのように見えるのか、本当に見えるのか。そんな不安がハードルを上げている。だから、とにかく信頼感・安心感・王道感を。「医療機器メーカーが発信する、医療機器である」ということを改めて訴求することで、お客様に安心してトライしてもらうことを目指しました。今後も、遠近両用コンタクトレンズといえばEDOFというポジションを目標にしていきたいです。
B to B to C
しかし、一般での需要が高まったとしても、処方施設がその製品を取り扱っていなければ意味がない。
コンタクトレンズ業界は私たちメーカー、処方施設様、お客様のB to B to C構造。特に真ん中のBである処方施設様が重要な役割を担う業界です。処方施設様に「この製品を患者様に勧めたい」と思っていただかなければ意味がありません。
何度も言ってきたようにEDOFは新しいレンズデザインのコンタクトレンズです。ただ口頭で説明するだけでは、この製品のよさを処方施設様に理解してもらうことはできません。そこで、勉強会が実施できる施設では積極的に勉強会の提案を行い、先生やスタッフの方々にEDOFの概念や新しいレンズデザインのメリット、ターゲット、お客様への案内のポイントなどをご説明して、実際の処方のイメージを掴んでいただくことを意識しました。
お客様への案内では、「こんなことありませんか?」と老視でよくあるシチュエーションを提示してから、EDOFの説明に入っていただくようにしましたね。
遠近両用コンタクトレンズの特性上、見え方の満足度には個人差があって、通常のコンタクトレンズのようなはっきりとした見え方を求める方には合わないこともあります。そのため、レンズを試していただく際には、お客様の生活スタイルや使用する環境、見たいものなどを伺ったうえで処方してくださいとアドバイスを行いました。
先生やスタッフの方が実際にお客様に案内するためのツールも、営業と営業企画で意見をすり合わせて制作しています。
結果的に、処方施設様からは「実際の処方のイメージを持つことでお客様にスムーズに案内できた」との声をいただきました。また、「これまで遠近両用コンタクトレンズを試したものの、見え方の満足を得られず諦めてしまった方にもEDOFを試していただくことで処方がうまくいった」との声も数多くいただいています。嬉しい限りです。
新しい付加価値ってなんだろう
コンタクトレンズ業界は今、新しい市場の開拓に移ってきているように感じています。EDOFはそんな状況のなかで先陣を切る製品でした。
すでに素材の進化や使用用途の広がりなどが進んでいますが、今後はコンタクトレンズそのものに新しい価値を付加していく必要があります。
コンタクトレンズを介して薬剤を投与するDDS(Drug delivery system)や、IT業界と連携したスマートコンタクトなどの普及も進んでいくと思います。より細分化されたターゲットに向けた考えが、新たな付加価値を生み出すと思うのですが…具体的なイメージなどありますか?
例えば、コンタクトレンズって本来であれば使わないでいられるほうがいいものじゃないですか。裸眼でいられるに越したことはない。これを逆に「つけていたほうが目にとっていい」「目をケアできる」など、使用することで新たなメリットがあるものに変えられたらな、と思っています。
なるほど。実現したいアイデアですね。付加価値をどのように生み出し、アピールしていくか、部署間の垣根を越えて社内全体で協力して取り組んでいけたらいいですよね。
そのためにも、部署内外でのコミュニケーションを大切にしていきたいですね。